2015年10月04日

「百年以上続いている会社はどこが違うのか?」

以前書きました能率協会の講演会であった田中 真澄氏の「百年以上続いている会社はどこが違うのか?」を読みました。

知っている人は知っていると思いますが“企業30年説”というのがあります。これは一つの事業を行っている企業の創業から衰退までが30年である、つまり企業の寿命は30年ということです。そこから考えると、100年以上続く企業というのは非常に優秀な企業で、事業が続くような努力をしている、ということです。

著書の中で日本にいかに長く続いている企業が多いかを示す資料として韓国の中央銀行が2008年にまとめた報告書『日本企業の長寿要因および示唆点』が引用されていました。そこに掲載されている「200年以上の老舗世界ランキング」では5586社(合計41か国)ある中で、その3146社(全体の56パーセント)は日本にあり、日本は断トツの世界ナンバーワンの老舗大国なんだそうです。ちなみに2位以下は第2位ドイツ837社、第3位オランダ222社、第4位フランス196社、第5位アメリカ14社、第6位中国9社、第7位台湾7社、第8位インド3社、だそうです。

企業の価値というのは、色々ありますが“永続性”も大事な一つだと思います。企業が社会で存在できるのは、何かしらの存在意義がある=社会に必要とされている、からだと思います。それを百年以上続けるというのは並大抵のことではないでしょう。

さて、では百年以上続く会社の共通項は何でしょうか?ということがこの本のテーマであり、いろんなことが書いてありましたが、私は“持続性のある経営理念”だと感じました。これを哲学と言ってもよいのですが、昔からあるお店などによくある“家訓”というやつです。この本の中でも老舗の“家訓”としていくつか紹介されています。

それをまとめてみると以下のようなポイントがあるのかな、と思いました。

1.正直
無理をせずに、無理を相手に言わずに、一攫千金を狙わず、正直に稼業に打ち込み、着実に生きて生きていくこと。

2.倹約
家を守るために行うべきことは倹約であり、その倹約の実行を支える心のあり方が正直だとされます。ここで確認しておきたいのは、倹約とケチは違うということです。
倹約は予め決めたことには支出するものの、衝動的な買い物はしないという習慣を身に付け、「入るを量りて出を制す」の精神のもとで、収入の80%以内で生活することを意味します。

3.勤勉
京都中山人形店の「商人の教則」では、「朝早く起き出て、店を清掃し、商品を整理し、顧客が来訪時に差支えなきようにし、他店に先んじて店を開くことは、自店の勤勉さを表し、顧客の信用を得る第一歩である」としています。

4.陰徳
陰徳とは人に知られないようにして世のために善いこと行う行為を指します。

大事なのは上の家訓のポイントを守ることが事業の継続性に寄与している、ということです。何か道徳か倫理的な話になって恐縮ですが、こういったことも心がける必要があるのかな、と感じました。



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2014年09月28日

逆境経営

先週は旭酒造の桜井社長が書かれた「逆境経営」を読んでいました。旭酒造は、言わずもがなですがすっかり有名になってしまった岩国のお酒“獺祭”を作っている会社です。私が岩国にいた時に酒蔵コンサートというのがあって1回行ったことがあります(たぶん、この会社のはず・・・。なんせ、昔の話で記憶があやふやのうえ、そのころ、この会社は全然有名でなくて、ほんとに田舎の寂れた潰れそうな酒蔵だったもので・・・)。

その私が行った頃に潰れそうな状況だったのを、この桜井社長が立て直して今の獺祭人気を作っています。本を読むと、本当にそのころは大変だったみたいで、それをいかに立て直したがこの本のポイントです。

我々に参考になる話がいくつかありました。

一つはターゲットとする市場です。岩国には市内の方に大きい酒造会社が幾つかあって(旭酒造がある場所はかなり奥地で元々岩国市ではありません)、旭酒造は岩国の市場では完全な負け組でした。桜井さんは岩国近郊の市場での戦いでは勝てる要素が全くないと判断し、大都市圏で勝負することを考え東京などでの販売に切り替えています。

製造業は作るのも大事ですが、売れなければどうしようもありません。その出口戦略、どこで戦うか、どこで売れば売れそうか、ということは非常に重要です。今年度の葉山の研修もマーケティングがテーマになっていますが、売るところを考えたうえでの開発、ということを心がけなければなりません。もちろん、それを全部自前で行う必要はなく(当然新市場は当社が得意ではないので)、他社と組むのは構いませんが、その場合は複数社と組むことを考えなければなりません。でないと、その頼りにしていた1社が逃げてしまうとその事業自体が立ち行かなくなるからです(先日聞いたのですがセロビースは元々ユニチカと組んでいたそうです。で、逃げられたので、今の状態らしい。しかし、ケミカルの案件は一本足打法のものが多いなー。)

二つ目が、目的と目標の設定で、旭酒造は純米吟醸しか作りませんが、それは商売の目的を「お客様が“うまい”と言ってくれる酒を造る」と設定し、それが出来て自社が他社に対して戦える商品として“純米吟醸”を選択しています。そこら辺に売っている大手が作っている安い日本酒は廃糖蜜から作った醸造用アルコールをがばがば添加した普通酒とか三増酒と呼ばれるもので、まずいだけでなく日本の食文化のお酒として世界に出せるようなものではありません。普通酒で勝負しようとすると、大量生産の価格勝負の世界になってしまうので、そこの市場は避けて、品質勝負の世界で戦うことを選んだ、ということです。

市場を意識した時に、お客様がどういったものを買ってくれるのか、どういうものが欲しいのか、といった“needs”や“wants”をきちんと抑えることと、その中で自分たちがどこで戦えるか、自分たちの強みを活かした戦場はどこか、ということを踏まえて選択することが重要です(その前提として、当然自分たちの強みが何か、ということを把握しておかなければなりません)。

三つめが製造方法についてです。日本酒造りは通常は経営者や社員は担当せず、杜氏と呼ぶいわゆる季節労働者(農家の農閑期の副業)的な方々の長年の経験と勘によるところが大きいのですが、旭酒造は杜氏さんが(経営難により)逃げたため、社員が酒造りをしています。素人が作るので、徹底したマニュアル化と工程の管理をして、誰が作っても同じ品質の酒ができるようにしているそうです。

製造においては、誰がやっても同じように同品質の商品を安定して、さらに効率良く生産することが重要です。その為には、きちんとしたマニュアルを準備し、極端に言えば何も知らない素人でもできるように形式知に落とし込んで共有化、管理していくことが重要になります。研究所で言うと作業標準ですが、あれをきちんと作っておくと転入者や新入社員でもすぐに実験が行えうようになり、また、個人によってデータのばらつきがある、なんとことはないことになります。

四つ目が社会貢献の話で、本の中では盛んに“食文化・酒文化に貢献”ということが書かれており、ワインのように世界中に日本酒の良さを広めたいと考えておられるようでした(そのために、パリに獺祭の飲めるレストランを開業しています)。

社会貢献というと、いわゆるメセナ活動やボランティアなどをイメージしがちですが、そもそも企業はその企業活動を通じて社会の役に立つ=貢献するのが根本です。製紙会社は紙を製造・販売することで社会の役に立つのが本来ですが、当社の場合、主力である情報伝達媒体としても紙の地位がネットなどの普及により相対的に低下したため、社会の中で役割の重要度が下がり現在の状況になっています。その為、製造業として社会的価値の低下していない製品の製造にシフトしていくのが、現在の流れです。

開発をする時に目の前の価値としては、会社がいかに儲かるか、ということを考えますが、同時にもっと大きい目で見て、社会にとってそれが価値があるか、貢献できるか、ということは常に意識しておかなければなりません。短期的に会社が儲かっても、社会的にその存在意義がないものは結局は長続きしません。

最後に本著の中で印象に残った言葉を二つ紹介します。
「企業である限り社会に貢献しなければ存続する価値は無い」
「人も企業も「味方」がいて「調子のよいとき」というのは成長しません。「敵」に囲まれ「ピンチのとき」こそ、成長させてくれる。」



posted by もりもり at 20:21| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月05日

ホンダ イノベーション魂!

現在、中央大学 客員教授をされている小林三郎氏のweb連載「ホンダ イノベーション魂!」が最終回を迎えました。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/FEATURE/20111115/201614/
氏は元・ホンダの経営企画部長ですが、もともとは技術者で16年の研究開発の末、日本初となるエアバッグシステムの量産・市販に成功した方で、自分のホンダの経験を元にイノベーションとは何ぞや、ということとホンダのイノベーションを成功に導く企業文化や仕掛けについて述べられています。

最近はすっかり議論されなくなってしまいましたが、研究所で行う仕事にもいろいろな種類があります。社会的に先進的か否かという観点からすると@国内他社の後追い、A日本で初、B世界で初、という感じで分けられます。キルンでのオイルコークス燃焼は@ですし、釧路のDKPはAとBの間:連釜DKPは世界で2例目でもN材、スイッチングは世界初。さらにBでも、メーカーが「出来ました」と言って持ってきたものをそのまま使うのと、いちから開発するのでは大きく違います。DKPは前者でしょうけど、電解やバイケミPJは後者でしょう。

上述の内、前の方ほど(比較的)簡単にできるのでリスクが低く取り組み期間は短く、後ろに行くほど難しくリスクも高く取り組み期間も長い、ということになります。当然、後ろに行くほどイノベーションの程度が高くなり、研究者・技術者としてはやりがいのあるテーマ、ということになります。また、うちの研究室に期待されているのは後ろの方のイノベーション度の高い方なのだと思います。

そういう意味でこの連載は非常に興味深い内容でした。折を見て紹介したいと思います。一応参考のために連載内容を下に示します。また、この内容をまとめた『ホンダ イノベーションの神髄』(日経BP社)という本が出版されています。これも参考にしてください。

【Part1】
第1回:厳しくも楽しいイノベーション 
第2回:「絶対価値」を実現する 
最終回:「なぜ他社の顔色を見る」 
【Part2】
第1回:なぜ上司はイノベーションに反対するのか 
第2回:“執行派”がイノベーションを潰す 
第3回:決断しない役員 
【Part3】
第1回:魔境の地、本田技術研究所  
第2回:イノベーションは手掛かりなしの宝探し  
第3回:あなたは「どう思う」、そして「何をしたい」  
第4回:哲学なき技術は凶器だ  
第5回:息づく本田宗一郎氏の哲学  
第6回:無駄なやつは1人もいない  



posted by もりもり at 15:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ビジネス書レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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